初版:2006/11/26
改定:2006/11/26
MEGAZONE WORLD - 二次創作 - 取れない繭

取れない繭 06(翌日、下校時・中編)


※ 本作は、とろとろ 氏 「千蟲姫エリヴィラ」への二次創作です。


ver a1.00



他愛のない会話を繰り返す内、沙織の手が、少年の手を包み込んできた。何処かぎこちない、頼りなさを感じさせる握り方だった。

『ねえ。前の娘、綺麗でしょ』

そうか、耳元にまで近づいているからには、少年の前に誰がいるのか見えるのか。ただ、何故由香のことをそんな風に言うのだろうか。

『男の人って、ああいう色気がにじみ出ている娘が好きなのよね』

少年には、沙織が一体何のつもりでそんなことを言い出しているのか、良くわからなかった。ただ、今沙織の手を握って合図することは、肯定と否定どちらになるのだろうか。

『あの娘とつきあってみたい?』

紹介でもしてくれるつもりなのだろうか?由香と沙織がしていた一部始を、終少年が飢えた狼のようになって凝視していたことは、知られていない筈なのだが。

『どうなの、ハッキリしなさいよ』

こんな状況で、いきなりそんなことを言い出されても困るのであった。

『さっきから返事もしないで、あの娘の事ずっと見ていたでしょ』

とんでもない誤解だ。今や、少年の配慮が裏目に出つつあった。

『そう、私と一緒にいるのが嫌なのね』

何時も何時も、理不尽な沙織だった。その性格を除けば、隣にいられることが少年にとってどんなに嬉しいことか判らないのだろうか。ただ、事態は刻一刻と不危険な状況に突き進んでいた。

こんな時はどうすればよいのだろうか。

経験の浅い少年には、かなり荷が重かった。またしても破れかぶれに近く、沙織の手を優しく、ただ出来るだけの思いを込めてギュッと握りしめてみた。

『……・』

沈黙が続いた。少年にとっては、審判の時を待つような気分だった。

『あの娘、男好きな感じでしょ。でもね、ベタベタしている男は嫌いなのよ。』

そうなんだ。
というか、男嫌いだとばかり思っていた。
で、それが何の関係があるのだろうか。

『それでね、………』(じゅるっ)

皆がいるバス車内なのに、耳を舐められた。

『ふふっ。どうして声を出さないの』

(チュッ)

『やっぱり、あの娘に気付かれたくないから?』

(チュル〜〜〜ピチャ)

『嫌われちゃうと困るものね』

別に由香に嫌われることを避けている訳では無いのだ。これ以上の泥沼化を避けるため、少年は必死に沙織と由香の間を遮ろうとした。しかし沙織は、少年が何を見ていたか、一つ一つ指摘してきた。それがまた何故か少年の好みをきちんと把握した部分ばかりで、自分の視覚から受ける由香の妖艶なイメージが余計増幅されてしまう。

『見て、身体のラインとか、とっても良いわよね。』

ピチャピチャと音を立てて沙織が少年の耳ばかり舐めている。

『あの娘の首から鎖骨のライン、なだらかで悩ましいわよね。思わず手を滑り込ませたくならない?』

沙織は一体どうしてしまったのだろうか。まさか、また保健室の時みたいになっているのだろうか。由香の肉付きの良い身体を眼前にしながら、後の沙織に妖しい事をされるのはたまらなかった。早く何とかしないと、少年の理性も危うかった

『助けて欲しい?』

出来れば、沙織の魔の手からも助けて欲しかった。今や、沙織の手は少年の手のひらを揉みほぐすような動きを見せていた。しっとりとした長い指が、少年の手の甲を這い回る。優しく撫で上げる沙織の指からは、まるで電撃が放たれているかのように少年の手を痙攣させた。沙織の5本の指が少年の手を責めていた。それも意図的なのか、保健室で沙織に舐められた指を特に念入りに。

少年の指の間に、沙織の指が滑り込み始めた。ただ、力ずくで指の間に差し入れるのではなく、何度も何度も少年の指をなぞっては、自然と指が開かれるのを待っている。シーツを握りしめた手を舌で融かしたように、5本の白い指は、執拗な責めで少年に指を開かせようとしていた。撫で上げられるたびに少年の手は力を失い、沙織の指を受け入れていく。指の力が抜けていくに連れ、だんだん沙織の指と少年の指が絡み合いだした。淫らな接触面積が増し、少年の指に沙織の指がしっかりと巻き付くようになった。

絡み取られた少年の指は、もはやどんなに動かそうとしても、沙織の手中から抜け出せなかった。

沙織は巧妙に少年の手を絡め取ったまま囁いた。

『ねぇ、続き、』

一旦言葉を途中で句切って少年の反応を待つ。絡み合った10本の指を蠢かせながら沙織は続けた。

『して欲しいんでしょ?』

少年は、沙織が理性を完全に無くしてしまっていることに気づいた。バスに乗ってから今まで、至近距離でずっと少年の間近で息を吸っていていたのだ。考えてみればこの混んだ車内は普通の部屋にいるよりも隙間が無く、有る意味保健室よりも密閉された空間で二人が密着しているのだ。沙織には、かなりの影響が出ているに違いない。まるでおねだりをしているみたいな、彼女の仕草がそれを雄弁に物語っていた。

『手伝ってあげるわよ』

このぎゅうぎゅうの車内では、振り向いてみることも出来ない。少年は沙織に逆らえないよう拘束されているも同然だった。ただ、きっと背後の沙織は目を妖しく輝かせている。質問しているような口調だが、その行動は別なことを物語っていた。少年の背を沙織のもう片方の手が、妖しく撫で回り始めた。

『ほら、手伝ってって言いなさいよ』

一体、何を手伝ってくれるのだろうか。吐息がかかる距離での会話が少年を苛む。保健室でさんざん味あわされた甘い吐息が次々吐きかけられ、少年の肺の中に充満してゆく。妖しい手つきで少年の体をなぞる少女は、繰り返し少年の承諾を求めた。
このままの状態では危ない。いつまた繭が活動を再開するかわからない。例え繭が眠ったままでも、沙織の仕草だけでも十分に蠱惑的だった。

『んっ』

背後からあがる甘い声。背筋にピリピリと響くこの声。乗客が揺られるたびに、その声を聞かされる。甘い声が、少年の背筋に電気を走らせ、それが股間へと吸い込まれていく。性感を直に刺激するような沙織の声に、繭が再び目覚め始めた。繭は今再び、少年の股間でゆっくりと蠕動を始めていた。

『ぁ、くっ』
『んんんん』

沙織は呻き声を漏らし続けた。少年の背中に張り付く彼女の身体は、柔らかく熱かった。ほぼ少年と同じ背丈、丁度首筋に沙織の息が掛かる。少年は、冷や汗をかき始めた。車内で激しく押し合いをしている状況では、身動き出来ない。だからといって、妙な動きをする訳にはいかなかった。前の由香にまで気付かれてしまう。少年はひたすら耐えながら、由香と沙織の間に自分が位置するよう努力した。

『はぁぁん』

物凄く抑えられた声なので少年の耳にしか届かないが、先ほどから背後の彼女は嬌声としか思えない喘ぎをあげっぱなしだった。ぐりぐり押しつけられているので、胸のたわわな弾力が存分に背中で味わえた。今では、後から首筋に吹き掛けられる吐息の熱さで、沙織の顔が少年の皮膚に貼り付かんばかりの距離に有ることが容易に判る。

混んでいるからだけではなく、少年は後を振り向けない。もしも振り向いたら、きっと沙織と顔が合ってしまうだろう。それも真っ正面から。そうすれば、保健室の状況が正に再開されてしまう。

沙織は、保健室と同じ距離で少年の首筋に顔を埋めていた。肌から立ち上る少年の強い香気をひたすら吸入していた。沙織がまだ少年の全身を舐め始めていないのは、奇跡に近かった。そして、今沙織と顔を合わせれば、何が起こるかは少年にも容易に想像が付いた。

『フーーーー』

襟足から少年の服の中へ、思いっきり熱い吐息が注入された。呼び起こされるあまりの興奮に、たちまちシャツが湿って皮膚に貼り付いてくる。湿った下着は、背後の彼女の感触を、まるで間に服など存在しないかのように、より一層身近に伝えてくる。沙織は我慢出来なくなったのか、腕を少年の腰に押しつけてきた。もう片方の腕が、少年の臀部をまさぐり始める。バスが混んでいるので、幸いにもその腕が少年の前へ回されることは無かった。

しかし、とうとう彼女は我慢出来なくなったらしい。じゅるり。少年の首筋に生暖かい蛭のようなものが貼り付いた。沙織の舌だ。蛭はゆっくりと肌を這うかと見せかけると、チロチロと撫であげる。更に分泌され塗り広げられた沙織の唾が、熱い唇で吸い取られる。

『じゅじゅじゅじゅじゅ』

バスのエンジン音を突き抜けて、少年の耳にはハッキリ聞こえてくる。沙織の戯に少年の背中が明確な反応を返すのが嬉しいのか、彼女の責めはどんどんエスカレートしていった。背後からの責めに全神経を集中させていたので、ブロックが疎かになっていたのかもしれない。さっきから前にいる由香が、何度も振り返っては後にいる少年の顔を見ている事に、やっと気付いた。

まさか、沙織とのことまで気付かれた?



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管理人:鷹巣 椎茸