初版:2010/08/02
改定:2010/08/02
調印式 風呂上がり編(その1)
メイドにチェックされても大丈夫なように、体中を隈なく丹念に洗った。
用意されている石鹸はなかなかの物だった。
貴族や王族向けの物なのだろう。
固形なのに簡単に柔らかくなり、1個をたった1回の入浴でほぼ使い切ってしまう。
その代わり、汗などの汚れは驚くほど簡単に綺麗サッパリと落ちた。
しかも洗い終わった後には清潔な香りが漂い、皮膚も輝くようにスベスベの肌になる。
さて、これだけ十分に洗えば「王子様が一人で入浴されてしまうと、お身体の洗い方が今一つですわ」などと咎められる事も無いだろう。
◆
脱衣場に戻って、バスタオルが無い事に気付いた。
普段なら入浴中にちゃんと準備されているのに。
あの何でも気の付くメイド達であっても、うっかり忘れるなんて事があるんだ。
そう思った途端に、扉が外から開けられた。
「王子様、身体はきちんと拭かないといけませんわ」
「そうですよ。ビショビショのままでお洋服を召されては困ります」
そう言いながら、ルセッタとパメラの二人が入ってきた。
「だって、タオルが……」
二人の姿を見た瞬間、思わず絶句してしまった。
普段のメイド服ではなく、神々しいまでの裸身を晒している。
…………いや……。思わず目を背けてしまったので、ちゃんと見ていなかった。
残念なことに、まったくの裸という訳では無かった。
それでも、鼻血が出そうなほど煽情的な身体を魅せつけているということに関しては大差無い。
タオルを1枚纏ってはいるけれど、すらっとした脚が付け根近くまで覗いているし。
剥き出になっている二人の両肩が、妙に色っぽい。
でも一番目を引くのはタオルを見事に押し上げる、それぞれ二つの膨らみ。
胸に巻かれたタオルが鎖骨まで覆い切れず、悩ましい球体の上部が思いっきり姿を見せている。
「ま、まだ着替え終わっていないんだけど」
「ふふっ。ですから『タオル』をお持ちいたしましたわ」
「ええ、そう申し上げた筈です」
男ならその姿を目にした瞬間に獣になってしまいそうなほど、煽情的な肉体。
そんな官能的な身体を目の前で惜しみなく晒しつつ、メイド二人が歩いてくる。
ただ歩いているだけなのに、タオルに隠されていない魅惑的な肌が微妙にくねり、男を誘う淫靡な輝きを放つ。
「さあ、お使いください」
「それとも、濡れたままにされるおつもりですか?」
左右に寄り添ったメイドが、見事な身体を見せつけるようにして耳元へ囁いてくる。
あまりの悩ましさに、思わず二人の身体をギュっと両腕で抱きしめてしまいそうになる。
そんな欲望をなんとか必死に押さえつけ、おかしな点を確認した。
「……ルセッタもパメラも、……タオルを持ってないじゃないか」
「ここに、ありますわ」
「フフ。どこを見ているんですか」
何処って…………。
あわてて胸から目を逸らした。
やはり、二人とも全くの素手じゃないか。
間違い無く何も持って来ていない。
タオルなんて、何処にも無…………………………いや、まさか?
異常なまでに接近したメイドの身体。
ほのかに甘い香りが二人から漂ってくる。
そう、今にも肌と肌が触れてしまいそうな距離にまでメイドが近寄っていた。
「遠慮なさる必要はありませんわ」
「お体を拭くためですから、どうぞご存分に」
そう言いながらメイド達は、その悩ましい身体を押しつけてくる。
軽い接触なので、辛うじて彼女たちの身体を覆うタオルのみが濡れた素肌に当たるだけで済んでいた。
まさか。二人の身体を覆っている一枚のタオル、これを使えと?
彼女たちは明らかに水着などを身につけていない。
タオルを取れば間違いなく、生まれたままの美しい姿が剥き出しになってしまうだろう。
しかしこの場に、それ以外のタオルは無かった。
※ 本話はサンプルの為、続きはまだありません。
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管理人:鷹巣 椎茸