調印式に赴いた王子を、妖艶なメイドが絡めとります |
「気が付かない筈はありませんよね?」
身体を這っていたパメラの視線が、正にその地点で止まった。
あれは気のせいだと思っていたのに。
「本当はご存じだったのでしょう? 最近のお着替、とてもゆっくりとした動作になりましたもの」
パメラの顔がそこに近づいて行く。
その距離が縮まるにつれ、そこが熱を持ったように疼き出した。
まるで彼女の視線が、物理的にその部位をジリジリと刺激しているかのように。
「肌着が軽く触れただけでも、感じてしまうんでしょう?」
顔が近づくということは、当然、肉感的な唇も一緒にそこへ接近する。
パメラが言葉を発する都度に、悩ましい吐息が吹きかけられた。
「特に、ここが」
息を浴びせられただけでビクンとなってしまう身体。
その反応が、全てを雄弁に物語ってしまう。
「うふふふっ。殿方なのに。乳首に息が当たっただけで、そんなに感じてしまうんですか?」
シャツの上からだというのに、まるで撫でまわされているように甘美な刺激が乳首を包んでゆく。
身を寄せたパメラの甘い香り。
「香水ではありませんの。私の香りそのものですから、タップリ吸い込んでくださいね」
乳首を蕩かすような性感とパメラの魅惑的な香りが混じり合い、頭の中で渦を巻くような快感へ融合する。
「ふふっ。それで良いんですよ。肉体が放つ、天然の香りですから。遠慮なく吸って下さいね」
吸えば吸うほど頭がぼーっとして、パメラの言葉だけが脳裏にこびりつく。
(……吸う……)
そう、吸えば良いんだ。
パメラの言うとおりにすればするほど、ふわふわとしてきて、とっても気持ちいい。
「うふふふっ。おかしいですわよねぇ。まるで女の子みたいに、乳首が勃ってきましたわよ」
(……おかしい?……)
ああ、胸、いや、乳首が変だ。
変?……いや、これは……
「ぁぁ」
あまりの気持ちよさに、思わず声が漏れてしまう。
いつの間にかパメラの指が、二つの突起を優しく撫でまわしていた。
とっても……ジンジン……する。
「如何ですか?」
パメラの指が動き続けるにつれ、切ないような、溶かされるような、不思議な感覚が乳首に纏わりつく。
メイドは主人の身体に触れてはならない筈なのに。
「ええ、これも医療行為ですわ……うふふふっ」
パメラの悩ましい声が、脳内を駆け巡る。
(そう、これは……医療……行為……)
しかし、何故だろう。
パメラの笑い声が何故か、獲物を前にした肉食獣が舌舐めずりをしている声のようにも聞こえる。
だがそんな思いも、パメラの指使いの前に呆気なく消散してしまった。
「どうされました? 王子様」
ああ。そんな表情を向けられたら、男なら誰でもクラクラとしてしまうような、パメラの肉感的な笑み。
だが……。どこかが、獲物を手中に収めた狩猟者が見せる様な、勝者の余裕といった表情に似ている?
その意味を考えようとしても、乳首の上でジリジリと動かされる指先に思考する力を麻痺させてられてしまう。
「こうされると、とっても気持ちいいんでしょう?」
(……うん……気持ち……いい……)
今は何も考えなくて大丈夫ですわとパメラが囁いている。
「さあ、もっともっと気持ち良くなってくださいね」
股間を撫でられるのとは異なり、胸から身体の中に送り込まれるまだ知らない種類の快感。
「力を抜いて、さあ、素直に快感を感じ続けて下さい」
撫でるのではなく、指先をじわじわと動かすだけで乳首の快感を引き出されてしまう。
見た目は、パメラの指がまるで止まっているかのように乳首に張り付いている。
でもその実態は、じわじわ、じわじわ、指先を震わせるように動かして、ゾクゾクするような快感を乳首に送り込んで来ている。
「ふふふふ」
何かを待っているのか、パメラの指先はひたすらその微妙な刺激を与えを続けてくる。
全く身動きできないままパメラの香りに包まれ、乳首を触られる快感。
ひたすら、気持ちいい。
「ええ、そのまま動かないで。パメラの指先だけを感じて下さい」
(……動いちゃいけないんだ……)
「王子様を開発する大事な作業ですから、しっかり感じ取ってくださいね」
(……パメラの指先だけを……)
「……」
黙ったまま、パメラが悩ましい目つきでこっちを見つめてくる。
それでいて彼女の指は、触るか触らないかの微細なタッチでひたすら乳首を責め続けてくる。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……?」
今、何か……。
「フフッ。どうされましたか」
「い、いや何でも……」
今、パメラが笑ったような?
見間違いなのか、真面目そうな表情でひたすら指先をジワジワと動かし続けている。
何かを探すように、繊細な探索を繰り返す。
滑らかな指先が乳首と癒合しているような、不思議な感覚。
「本当に何でもありませんか」
「な、何も……」
「本当にそうですか」
「べ、別に……」
未だ股間で疼くように燻り続ける快感の熾火。
乳首を羽毛で撫でるような微妙なタッチが切ない快感を引き起こす。
パメラの指に操られ二種類の快感が、身体の中で大きな一本の糸に繋がり始めた。
「ぁ……?」
「ふふっ。ここですね」
今まで僅かにしか動かなかったパメラの指が、突然乳首をクリクリと刺激してくる。
「ひゃぁっ?」
「フフッ。まるで女の子みたいな声を上げてしまわれて」
更にはグリグリと乳首を捏ねまわすように刺激し始める。
その途端、我慢出来ないさざ波が身体の中を走り抜けた。
(な、何……、……これは……?)
(乳首を……触られた……だけで……いきなり……)
「フフ。涎が垂れていますわ」
「え、ふょ、ふょうふぁ」
かつて経験したことの無い種類の快感に、喋ろうとしてもまともな言葉にならない。
「あらあら。まだ本日のお薬さえ使っていませんのに」
「おきゅしゅふぃ?」
「フフ。『お・く・す・り』ですわ」
男を蠱惑する見事な身体を誇示するようにくねらせながら、耳の穴に息を吹きかけてくる。
囁かれただけなのに、身体が震えるほど気持ちいい。
「さあ、王子様? 私に、どうして欲しいですか」
魅惑的な表情で微笑みながら、パメラは妖しく指を動かし続ける。
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