妖しいキスに、少年は…… |
状況描写追加サンプル版です。
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椅子の後ろに立つ女性から声を掛けられた。
「動かないで下さいね」
同時に頭の向きををクッと直される。スタイリストである”姉”からすれば、
カット中に動かれては困るのだろう。しかし、おとなしく座っていられない。
だって、見えるのだ。
「そうそう、動かないでね」
目の前でメイクを行っている”妹”の言葉と共に、甘い息が顔に当たる。
それほどの距離だった。しかも、姉妹揃って美人なのだ。本来は
本人達の方こそ、カットやメイクをして貰う立場、つまりモデルとか
女優としか思えない程の物凄さ。それでいて、確かに腕は立つようだ。
実に息の合った仕事っぷりで、椅子に座った俺を前後から効率よく結婚式に
相応しい姿へと整えてくれている。
いるんだけれど……
痛っ! また頭の向きを治されてしまった。しかも今度は何も言わずに。
どうやら”姉”の方を、少し怒らせてしまったのかもしれない。
だが、これには理由があるのだ。至近距離で見詰め合うようにしながら筆で顔を撫で
られるだけでも、何とは無しに気恥ずかしいじゃないか。それも、美人にニッコリと
笑いかけられながらだったら、もしかしてこっちに気が有るのかと、つい勘違いして
しまいそうになる筈だ。それに加え、いやこれが一番の理由なんだけど、胸元が大きく
はだけているのだ。
立って向かい合う程度の距離なら、ちょっと開いているかな、程度かもしれない。
しかしまるで密着するかのようなこの距離では、見えるんだよ! それも胸元の
肌理細やかな肌から始まり、見事な膨らみそのもの片鱗がクッキリと。
多分、角度さえ合えば見事な眺めをがきっと見える……筈だ。
素晴らしき双球の盛り上がり具合どころか、もしかしたら丸々そのものが拝めるかもしれない。
だから、つい目で追ってしまっても仕方ないじゃないか。ほら、もう少しで……見えそう……。
「あ痛!」
「変な髪形になっても知りませんわよ」
「ぷぷぷぷぷっ」
この”妹”、もしかしてワザとやってるんじゃないか。見え方も、なんか絶妙の角度で
見えないようになってるし。
『ふーん、私の体を見てぇ興奮しちゃったんだぁ』
『だ、誰が』
小声で囁きかけられると、なんかゾクゾクする。
内心を隠すように目を逸らしたのがいけなかった。
『ふふっ』
『……!』
気付いたときには目の前に綺麗な顔が寄せられ、その生暖かい唇は吸い付くように
ピッタリと押し当てられていた。しかも濡れ輝くような瞳がまっすぐこっちを見ていて。
悪戯なんかじゃなく、本気のキスのような。
くねるように舌が忍び込んでくるのに、吸い付いてくる唇は音を漏らさない。唇の隙間から
口の中に、甘く柔らかい生き物が侵入してくる!
面白がるような表情を浮かべてのキス。しかも、こちらの反応を推し量るような目付きで
じっと見詰めている。やっぱり、からかわれているのか?
そんな事を考えていられたのも一瞬の間だけだった。
差し入れられた”妹”の舌が、異常なまでに悩ましく絡みついてくる。
こんなの、ありえない! 巻きついた舌が濃厚な快感を口に注ぎ込んでくる。
たったそれだけで完全に弛緩しきってしまった、俺の身体。
ただのキスなのに。
口の中で彼女の舌が蠢く度に、妖しい快感が次々と咥内へ送り込まれてくる。
ヌルヌルと絡められる粘膜同士の濃厚な接触が、信じられないほどの快感を呼び覚ます。
有り得ないまでに気持ち良い!
股間の強張りも、今にも射精が始まってしまいそうだと告げていた。
「動かないで下さいって、お願いしてますよね」
背筋に水を浴びせるような”姉”の言葉。後ろからだと、見えていないのか?
確かに、妹とピッタリ顔が重なり合っているから鏡でも判らないのかも。
「あら、」
訝る様な声。気付かれたか! でも、これは違うんだ。
「何をしていらっしゃるのですか」
「ふょふぉふぇふぁ」
否定しなければならないのに、出来なかった。
何故なら……。
……
だって、まだ…………口の中…………に…………
「喋れないわけでは、ないんでしょう?」
言い返したくても、思うように喋れない。
「どうして頬を、そんな風に膨らませていらっしゃるのですか」
後ろから、見えてる!?
「もごもごと蠢いて、まるでお口の中に何かいるんですか」
叫ぼうにも、声が出ない!!
……限りなく滑らかで、……そしてヌルヌルと甘いモノに巻きつかれて……
「私とお話しするより、そんなものをおしゃぶりしている方が良いんですか」
違ぅ…………だって、舌…………これは、舌が…………
ぁ!……動ぃて……!……動かさないで!!…………
「ふふっ。なんだか、とても気持ちよさそうですわよ」
舌……舌が!!…………
姉”の言葉と共に”妹”の舌が、動き方を変えてきた。
今までチロチロと動いていた舌先が一転すると、蹂躙するように舌に巻きついてくる!
「ご満足ですか、妹のキス」
今までずっと見られていた?
二匹の蛇のように絡まりあった、この舌の動きを!
「妹の舌を、もっと味わいたいのでしょう?」
「ふぃ……ふぃふぁぅっ……」
艶かしい舌に巻きつかれて、否定することも出来ない。
違うんだっ!
これは、僕が動かしているんじゃない。
巻きついてきた舌に絡みつかれ、踊り続けさせられている僕の舌。
甘く切ない感触に覆い尽くされて、もはや自分の体の一部分とは思えない。
「フフ。いいですわよ。それならサーシャ、王子様にもっと濃厚なキスをして貰いなさい」
舌!舌が、吸い出される!!
///// 以上 /////
本話自体がまだ構想中の為、更新はしばらくありません。 / 目次へ戻る